出てきたものを見て吐き気に襲われた。毎回、この作業には苦労する。きっと、この作業に慣れるやつなんてこの世に居ないんだろうな。
 隣の奴はまだゲロゲロやってた。見なきゃいいのに。よく見たら新人だった。どうりで弱いはずだ。反対に、前に居るおっちゃんは慣れてる。ちょっと顔を顰めただけで、また作業に戻っていた。
 俺も作業を再開した。生臭い鮮血でぐちゃぐちゃになってる自分の臓腑をちょっぴり切って、袋に詰める。ちなみに痛みは無い。臓腑税なんて、技術が発達したからといって、ないよなぁ。血がどくんどくん出てる自分の臓腑を見ながら、そんなことを思ったりした。国家は何に使ってんだろう?臓腑なら鳥とか豚とかのが旨いのに。
 国家がセルフサービスで出してくれる変な軟膏を切った臓腑にたくさん塗る。丁寧に臓腑をしまってから、それを取り出すために大きく切り裂かれた自分の腹にも塗った。みるみるうちに傷が無くなった。この軟膏は本当にすごい。前にひとつパクって家で使ってるが、本当に何でも効く。湯に溶かして飲めば、風邪にも効いた。
 役所の姉ちゃんに一言してから、ふと俺は思った。ああ、国家は俺たちを殺すつもりなんだ。俺たち人類を滅ぼすつもりなんだな。次々と倒れる奴らを見て、俺は、自分の腹を摩った。




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